この制作指針は、運営スタッフ内で調査・検討し、WordPressによる(数ページ程度のコーポレイトサイトを想定とした)WEBサイト制作における2020年5月時点でのベストプラクティスとして作成しました。制作ボランティアの方は必ず目を通しておいてください。
しかし、これはあくまで指針であって、担当するプロジェクトや団体の方針とは必ずしも合致しない点があるかもしれません。チーム内でベストと思われる解決法があるならそれを優先してプロジェクトを進めていただいて構いません。その方法がこちらの指針と大きく異なり迷う場合は、運営スタッフにご相談ください。
また、ディレクター担当の方で下記内容でご不明な点がある場合は開催前に運営スタッフにご連絡ください。
目次
1. 全般について
1-1. 当日のコミュニケーションや作業配分について
2日間ずっと動画や Slack など(ツールに指定などは特にありません)に参加しないといけないということはありません。 チーム内で調整していただいて、休憩や用事で抜ける時間など相談してください。また、申し込みされた担当の役割以外のことでも、みんなで力を合わせて完成に向けて作業してください。
1-2. ゴールに向かって最大限の努力をしますが、完成の保障は必要ありません
チームのメンバーやコンテンツによって、成果がバラバラなのが当然です。なるべくイベントの期日内にリリースさせることを目標に動いていただきたいですが、無理矢理リリースを急いだり、必ずしも期日内で完成をさせなくてはならない訳ではありません。ヒアリングに手間取ったり、色々な事情でリリースが間に合わないことはよくあることです。
そういう意味で完成の保障はされないことを、運営者さんにもご理解いただいた上でプロジェクトを進めましょう。
2日間で作成しきれなかった場合、コンテンツの入れ込みは団体側でできるところまでは進める、またそのレクチャーは行い、団体側がサイトを運用できるところまでの進行はお願いします。判断のタイミングを2日目のお昼休憩頃とし、ディレクター役の方は進捗によって午後の方針を決めるようにしてください。
1-3. 法令遵守、著作権侵害などについて、ご留意ください
運営者さんの中には、例えば写真等の著作権について良くご存知ではない方もいらっしゃるかもしれません。意図的でないにしても、使用できないコンテンツや素材の掲載等をご希望の場合には、きちんと説明をして断るようにしてください。 説得が難しい場合は運営スタッフにご相談ください。
1-4. プライバシーポリシーを作成しましょう
プライバシーポリシーは公開されたWEBサイトには必要とされるページです。WordPressにはヨーロッパの主要なプライバシー基準である GDPR の求める内容に基づいたプライバシーポリシーの作成と個人データのダウンロード等の機能が標準で搭載されています。詳細はWordPress のプライバシー | WordPress.org 日本語を参照ください。
実際のプライバシーポリシーの記載内容については、日本の法律に合った表現が必要なため、下記の雛形の例なども参考にしてみてください。Cookie取得、コメント機能やお問合せフォーム等サイトの機能や、団体の活動内容によって追記・改変の必要性がないかをちゃんと検証しましょう。
1-5. ドキュメントを作成しましょう
団体の方向けに、サイトについてのドキュメントを作成しましょう。 サイトの構成(利用しているプラグインやテーマ)や運営上の注意点(テーマやプラグインの依存関係など)、サイトの運営方法などを記載することで、団体がサイト運営する際に非常に役立ちます。
ドキュメントはサイト内に非公開ページとして作成するか、もしくは団体の方がわかりやすい方法で作成しましょう。
1-6. 対応ブラウザについて
協議・検討の時間を省くためにも、以下を標準対応としておきます。
特にクライアント側への説明は必要ありませんが、クライアントから質問があがった場合は個別に対応外であることをお伝えください(例えばInternet Explorer 11(IE11)で見れないと言われた場合は、対応範囲外です、とお伝えください)。
※ そのためにも、クライアントの確認環境(PCとモバイル)を事前にヒアリングしましょう
1-6-1. 標準の対応ブラウザ
- Safari / Mozilla Firefox / Google Chrome / Microsoft Edgeの各最新版でIE対応なし
モバイルは
- iOS最新版 + 一つ下のバージョン
- AndroidはChromeのみ
- シミュレーターでの確認のみ実機確認はしません
- Androidの標準ブラウザは基本的にサポート外
テスター担当の方で、Windows / macのPC両方をお持ちでない方もいらっしゃると思います。その場合、
- Windows / macどちらかお持ちでない方をチーム内で持っている別のどなたかが確認 (WindowsならMS Edge、macならSafari)。チーム単位でもお持ちでない場合はチーム別のテスター間でカバーし、最終的に運営側でもカバーすることといたします
- 仮想環境でOS別でも確認・テストを行えるテスター担当の方はそちらを使ってもらってOKです
2. サイトのメンテナンスについて
イベント終了後のサイト管理は団体が行います。 そのため、いわゆる手離れがいい作り方にも配慮して頂く必要があります。イベント期間中に投稿・編集方法のレクチャーや、コア・プラグイン・テーマのアップグレード操作の説明または自動更新のセットアップをしておいてください。
また、費用や人的リソースの関係で、5年やそれ以上の間リニューアルしないことも考えられます。なるべく長く使えるサイトを作ることが団体の方には喜ばれます。長期間問題なく使えるようなサイト作りをすること、アップグレードなどの定期的なメンテナンスのことも考えてプラグインやテーマを選ぶことに配慮してください。
とはいえ、何らかのトラブルや追加機能希望でプロのサポートが必要になることもあると思います。そういったときのために、公式サイト内でのリソースの検索方法、公式フォーラムへの投稿方法、クラウドソーシング(例えばココナラ、クラウドワークス、ランサーズ)やボランティア募集サイト(例えばActivo、ボランティアプラットフォーム)を使う、などという方法もお伝えしてください。また、お互いに条件が合うようでしたら無償または有償でメンテナンスやトラブルシューティングをイベント後に請け負うこともできます。これについては推奨も禁止もしません。
3. ホスティングについて
WEBサイトを公開する場所をどこにするかは、今後のメンテナンス性やサイトのスピードなどにも大きく影響しますので、そのサイトに最適なサービスを選びましょう。
3-1. スポンサーの提供しているホスティングサービスについて
今回はスポンサーが提供している2つのホスティングサービスのうち下記のプランが永年無料で使用できます(これらの利用は必須ではありません)。各サービス内容は下記リンクをご参照ください。
4. ドメインについて
団体の運営者とのヒアリングにも寄りますが、独自ドメインを必ずしも用意する必要はありません。
運営者さんが費用の捻出等で迷われた場合は、ロリポップやShifterで提供されている無料サブドメインの利用も視野に、検討してください。
また、すでにドメインを保有している団体でリニューアルを希望されている場合は、ドメイン移管の作業が必要となります。
5. テーマ・プラグイン選定について
5-1. 100% GPL または WordPress.org 公式ディレクトリに掲載されているテーマ・プラグインを使用してください
WordPressコミュニティでのイベントということもあるのですが、今後のメンテナンス性なども考慮した結果、今回使用するテーマ・プラグインは100% GPL または WordPress.org 公式ディレクトリに掲載されているテーマ・プラグインを使用してください。 100%GPLや公式ディレクトリについてご不明な点があれば運営スタッフにご相談ください。
管理画面から簡単にアップグレードができないプラグインやテーマの利用はお控えください。
5-2. テーマの選び方
テーマは100%GPLのもので、更新やメンテナンスが定期的に行われているものを選びましょう。 有料のテーマを選択したい場合は、団体と相談の上、事前に団体に利用にあたっての説明と購入・アカウント作成などを行うよう伝えましょう。
なお、今回は以下のテーマを制作している個人・企業がスポンサーとなっています。通常は有料でしか利用できない豊富なテンプレートや機能を持っているテーマが下記の範囲での利用が無料で提供されるので、採用を検討してみてください。(ここから選ばなければならないわけではありません。)
5-2-1. スポンサーの提供しているテーマ
3テーマ(Lightning, LIQUID PRESS, Snow Monkey)とも
- ブロックエディタには完全対応
- テーマのアップデート(管理画面からのアップデート)にも対応
しています。
以下は主に今回の無料の範囲を表にしたものです。
その他の各テーマの特徴は各テーマの公式ページから確認してください。
テーマ名 | Lightning | LIQUID PRESS | Snow Monkey |
---|---|---|---|
対象プラン | Lightning Pro | メディアサイト向け有料テーマ「LIQUID MAGAZINE」 | スタンダードプラン |
拡張プラグイン | VK Blocks Pro | LIQUID BLOCKSほか | Snow Monkey Blocks |
サービスのタイプ | サブスクリプション | 買い切り | サブスクリプション |
無料の期間 | 利用期限なし(10年 ※1) | 利用期限なし(買い切りのため) | 利用期限なし(テーマ作者が対応する限り ※2) |
サポート範囲 | Proプランの対応範囲内(但しフォーラム等での直接の質問は含まない) | 導入サポート(メール対応/30日間)、WordPress使い方マニュアルPDF | スタンダードプランの対応範囲内 |
※1: Lightning Proのライセンスは10年分に設定したライセンスキーを使用できます。ただし特別に発行するライセンスなのでLightning専用フォーラムへの質問の書き込みはできません。
ご利用ユーザーからの質問に直接対応する必要がある場合は(ユーザー数・質問数が多いと厳しいので)1年分のライセンスを発行してフォーラムでの質問対応となります。その場合2年目以降のアップデートやフォーラムでの質問対応をご希望の場合は更新ライセンスの購入が必要です。テーマはライセンスが切れるとアップデートができないだけで継続して使用できます。
※2: テーマは継続して使用できますが、サポートフォーラム利用の保証はできません。
5-3. プラグインの選び方
100%GPLのものを必要に応じて利用しましょう。ただし、プラグインはサイトに大きく影響を与えるため、不要なプラグインのインストールは避け、メンテナンスが容易になるよう留意しましょう。
ご参考までに推奨するプラグインのリストを作成していますので、ご利用ください。
5-3-1. 多機能
5-3-2. バックアップ
5-3-3. 翻訳
5-3-4. フォーム
6. バックアップについて
不慮の事故などによりデータを紛失してしまった場合に以前の状態に復元できます。
6-1. スポンサーのバックアップサービスについて
6-2. バックアッププラグインの利用
Shifterをご利用の場合は必要ありません(上記のリンクを参照)が、Lolipop他をご利用の場合でWordPress自体の自動バックアップをご希望の場合は、バックアッププラグインをご利用ください。
7. リニューアルについて
7-1. リニューアル時の事故の可能性について、運営者さんに予め了承して頂く必要があります
サイトのリニューアルを希望されている場合、リニューアル時にデータ損失等の事故が起きる可能性があることを団体の運営者さんに予め説明し了承していただく必要があります。また、リニューアル時には作業前に必ずデータのバックアップを行ってください。バックアップ方法が分からないなどありましたら運営スタッフまでご相談ください。
7-2. コンテンツの移管を希望されている場合も、全てに対応する必要はありません
リニューアルの場合、コンテンツの移管を希望される事が想定されますが、全部のコンテンツに対して対応する必要はありません。既存のコンテンツを精査し、取捨選択していくこともリニューアル時の大事な作業です。限られた時間内で効果が高いと思われる部分から手を付けましょう。
7-3. ドメイン切り替えは行いますがサーバーのデータお引越しは行いません
上記の理由により、基本的にサーバーのデータ移行作業は作業者でなく、リニューアルを依頼した人が行うようにしましょう。リニューアルの際にサーバーをスポンサー提供のサーバーの利用に変更される場合は、いわゆる引越し作業はドメインの切り替えまでとし、イベント終了後にインポート機能を利用したり手動でコンテンツを移動してもらうようにしましょう。データ移行をしてもらうためのレクチャーなどは必要かもしれません。
7-4. 個人情報は取り扱わないようにしましょう
既存サイトで個人情報を取得・保管している場合、個人情報の移管をお願いされたとしても、作業しないようにしてください。作業をお願いされた場合は、スタッフまでご連絡ください。
8. カスタマイズについて
8-1. カスタム投稿タイプは基本的に利用しない
カスタム投稿タイプは基本的に利用せずにサイト構築しましょう。カスタム投稿タイプは便利な機能で、投稿を種別ごとに分けて扱うことができますが、ある程度専門知識が必要なため、今後各団体がメンテナンスしていくことが難しいと予想されます。通常の投稿のカテゴリーを分けるなどで、構築していきましょう。
解決方法が不明な場合は運営チームまでご相談ください。どうしてもカスタム投稿タイプが必要と思われるケースについてはこの限りではありません。
8-2. カスタムブロックは作らない
カスタムブロックを一から開発しようとはしないでください。また、利用するテーマやプラグインによって追加されるカスタムブロックは、依存性があることを念頭に入れた上で、利用は必要最小限にとどめましょう。また、利用する場合は団体運営者側に対して事前にテーマやプラグインに依存している旨(テーマを変えたら動かなくなる可能性があります。など)を伝えておきましょう。
8-3. 多言語化対応は優先順位を考えて
プラグインなどでサイトの多言語化は可能ですが、設定や翻訳作業など人手が多くかかります。多言語化対応が必要な場合は、制作チームのメンバー構成にもよりますが、作業ボリュームのバランスを見て言語数やページ数を制限することを推奨します。
9. お問合せ窓口について
お問合せの窓口の設置方法としては主に、
- 電話・FAXでの対応
- SNSでの対応
- メールでの対応
- Googleフォームでの対応
- メールフォームプラグインでの対応
- サーバーにデータを保存するタイプのフォームプラグインでの対応
などがありますが、その団体やプロジェクトにとって何がどこまで必要かを見極めて提案しましょう。
特に個人情報はなるべくサーバーに持たせないことを念頭に、以下のチャートなどを参考に最適な方法を選んでください。
9-1. お問合せ関連制作指針チャート
お問合せがサイトのゴールとなるケースが多いと思いますが、団体の方針やコンテンツによって、どんなお問合せの受け付け方が最適かの判断材料になれば、という目的で作成されたチャートが以下にあります。良かったらご利用ください。
do_action Japan 2020 お問合せ関連制作指針チャート
10. サンプルサイト・サンプルコンテンツ
制作事例としてサンプルサイトをご用意しましたので、良ければ参考にしてみてください。
- サンプルサイト01 – 使用テーマ: Lightning Pro / ホスティング: ロリポップ
- サンプルサイト02 – 使用テーマ: LIQUID MAGAZINE / ホスティング: ロリポップ
- サンプルサイト03 – 使用テーマ: Snow Monkey / ホスティング: ロリポップ
- サンプルサイト04 – 使用テーマ: Blossom Spa / ホスティング: さくらインターネット
- サンプルサイト05 – 使用テーマ: Snow Monkey / ホスティング: エックスサーバー
- サンプルサイト06 – 使用テーマ: Snow Monkey / ホスティング: Shifter
- サンプルサイト07 – 使用テーマ: Codilight Lite / ホスティング: Shifter
11. 寄付機能について
寄付の受付を団体が希望される場合、可能かどうかをヒアリングして判断する必要があります。寄付の受付は法人のみ可能です。
作成する場合は、購入型(寄付を行った人に対して、ニュースレターやお礼の品など、何かしらの対価が発生するもの)が作成可能です。また会員権の購入という形も可能です。かつ特定商取引法のページの用意が必要となりますので必ず作成ください。
11-1. 実装方法について
12. アクセシビリティについて
基本的に 「誰もが閲覧できる」公開情報であるWebには「アクセシビリティ」という視点が必要です。使える人の範囲が広いことを「アクセシビリティが高い」といいます。アクセシビリティについては、それだけで本が何冊も出ているほどの検討項目がありますが、ここでは基本を抑えていただく意味で以下のサイトをご紹介しておきます。
Webアクセシビリティ確保 基本の「キ」|実践ノウハウ|エー イレブン ワイ[WebA11y.jp]
13. SEO とアクセス解析について
13-1. SEO について
SEO とは Search Engine Optimization の略で「検索エンジン最適化」を意味します。インターネットにおける検索結果画面に自身のWebサイトを上位表示させることで、より多くの人に閲覧・利用してもらうための一連の施策を SEO と呼びます。Web サイトを作り、運営する上でその手法は実にさまざまなものがあります。
SEOで大切なのはとにかく「使う人・見る人=ユーザーにとって役立つもの、魅力的かつ独自性のあるコンテンツを目指す」ということです。
現在は Google の検索エンジンに一極化しているため、こちらの Google Search Console ヘルプ「ウェブマスター向けガイドライン(品質に関するガイドライン)」に目を通して、どういったことに気を配り、制作すべきかを確認してみてください。
13-2. アクセス解析ツールについて
SEO や Web サイトの使い勝手(ユーザビリティ)を向上・改善するうえでは、サイトへのアクセス数などさまざま指標が分かる分析ツールを活用するといいでしょう。本制作指針では、可能なら Google Search Console や Google アナリティクスの導入を推奨します。
参考ページ
13-3. 複数ページあるサイトには XML サイトマップを設定する
そして、実際に数ページ構成の Web サイトを制作したら、検索エンジン(Google の巡回クローラー)に、どのようなページがあるかやサイト構造を知らせるための「 XML サイトマップ」を作成し、 Google Search Console に登録しましょう。
現在まだ WordPress そのものには XML サイトマップ作成・登録機能はありません(予定があり進行中です)。今回は以下に挙げるいずれかの WordPress プラグインでの作成をオススメします。
更新履歴:
- 2020/05/11
- 3-1. ホスティングサービスに提供サービスの詳細を追記しました。
- 2020/05/12
- 11-1. 寄付機能の実装方法について追記しました。
- 2020/05/13
- 12. アクセシビリティについての項目を追加しました。
- 3-1. Shifterさんご提供の資料のリンクを追加しました。
- 2020/05/14
- 13. SEOとアクセス解析についての項目を追加しました。
- 8-1. カスタム投稿タイプ使用についての表現を修正しました。
- 2020/05/15
- 10. サンプルサイトを2つ追加しました。ホスティング情報も掲載しました。
- 10. サンプルサイト07を追記しました。